イベントでの手順の省略とは、プレイヤーが特にそう宣言せずにルール上の一連の行動の一部を飛ばすことである。ゲームをスムーズに進行するためには必要であり、これによってルール上の些事にとらわれることなく明確なプレイを行なうことができるようになる。
プレイヤーは自然に手順省略を使って、ゲーム上の不要な遅延を省くことで、スムーズにゲームを進行するようにしています。プレイヤーが呪文を唱えるたびに「スタックに積んで、対象を選んで、土地からマナを出して、コストを払って…」ということを想像してみてください。その代わりに、単純に土地をタップして、カードをテーブルに置いて、対象を示す、ということをしているわけです。Magic Onlineで、すべてのタイミングで操作を止める設定にしておくと、どういうことになるかを把握できると思います。
イベントでの手順省略は、ゲームのペースを改善し、「やらかしたー!」と思う状況を減らすことです。手順省略がゲームの進行をスムーズにする一方で、プレイヤーはミスをしますし、それによってプレイヤーが意図したとおりの行動を行おうとした時のタイミングを、誤って省略してしまうこともあるのです。
ほとんどの手順の省略は、1回またはそれ以上の回数、暗黙に優先権の放棄を行なうことを含む。
こういった手順の省略は、プレイヤー間のコミュニケーションが言語障壁に阻まれたときに役に立ちます。手順省略のおかげで、世界中のプレイヤーが「Go」や「Attacks?」といった単純な言葉でコミュニケーションをとることができるのです。ほとんど説明を行う必要はありませんから、気まずい雰囲気になるような解釈のズレはほとんど起きません。
優先権の放棄を含む手順の省略を新しく使いたい場合、その宣言の一部として最終的なゲームの状態がどうなるのかを明確にすること。
プレイヤーは「私がこれをして、あなたがこれをして、私がこれとこれをした状況にしたい」ということを提案してもかまいません。ただ、その手順省略をそのプレイヤーがどのようになるかを示したり、説明したりすることで、正確な手順から望む結果を導き出すことができなければ、その手順省略は無効です。プレイヤーが「このエルフをタップして緑を1マナ出し、そのあとこれをアンタップする。この手順を100回繰り返したい」ということもあるかもしれません。
プレイヤーは、省略されている一連の行動の途中で、どのようにして、またどの時点でその行動から逸脱するのかを宣言し、中断させることができる。
例えば、《
玄武岩のモノリス》と《
催眠の宝珠》をコントロールしているプレイヤーAが、「《モノリス》をタップして、そのマナで《モノリス》をアンタップするということを、30回か土地が捲れるまで繰り返したい」と言ったら、中断条件が提示された手順の省略となります。他の例としては「《
稲妻》を唱えて優先権を保持したい」といったものもあります。
この方法で、自分自身の行なっている省略を中断することも認められる。ゲームを曖昧なものにするために、宣言されていない手順の省略を用いたり、一般に用いられている手順の省略を勝手に変更したりしてはならない。手順の省略の一部が、不適正であることが発見されたり不適正になったりした場合、その手順の省略はその時点で中断される。ゲームを曖昧なものにするために、宣言されていない手順の省略を用いたり、一般に用いられている手順の省略を勝手に変更したりしてはならない。
プレイヤーは優先権を要求し、何もしないことを選んではならない。何もしないことを選んだ場合、優先権は要求されなかったものとして直前に優先権を持っていたプレイヤーに戻される。
これは、プレイヤーが優先権を要求した後、その優先権を放棄して「両方のプレイヤーが優先権をパスしたので、ゲームが次の段階に移った」と主張することを防ぐためにあります。 そう、これは過去にあったことなんです。
プレイヤーは、自分の呪文や能力の解決中に対戦相手が手順の省略をしたとみなしてはならない。視覚的な影響を伴わない選択が行われたかどうかを改めて確認する必要がある。
プレイヤーは対戦相手が何かしらの呪文や能力によって、選択的な効果を使用しないということを確認して進めなければいけません。もしプレイヤーが《
流刑への道[card]》を《[card]灰色熊》に対して唱え、対戦相手が基本土地を探そうとしなかったなら、対戦相手に対して「基本土地を探すか」と確認しなければならないのです(それをしないなら〔意思疎通規定抵触行為〕となる場合があります)。
マジックで伝統的に用いられている手順の省略として、以下のようなものがある。
これらは一般的な認定大会すべてに渡って公式な手順の省略となります。 プレイヤーはそのゲーム中において、ルールを順守する限りは他の手順省略を相手に提案することもできます。
これらは既定の意思疎通を定めるものであり、プレイヤーが逸脱したい場合、そうすることを明示すること。
プレイヤーが手順省略に割り込んだり省略手順を変更したい場合、そのプレイヤーはそのことを明示する必要があります。プレイヤーが「Go」と言った時に、対戦相手がメインフェイズ中に行動をしたいとなったら、そのように省略を逸脱することを示さなければなりません。そうしないなら、その行動は手順省略で明示されたタイミングで行われたという扱いになります。(このケースでは、対戦相手の終了ステップで行われたという扱いになります)
また、例示の中には、暗黙に優先権を放棄することをもたらすという点において上記のポリシーに反するものがある。
・アクティブ・プレイヤーが、スタックが空の状態で第1メインフェイズの優先権を放棄したとき、戦闘開始時の誘発型能力が誘発するかどうかに影響する場合を除き、非アクティブ・プレイヤーは戦闘開始ステップで行動するものと解釈される。
アクティブプレイヤーが「戦闘」や「アタックしていい?」という確認を取った場合、そのプレイヤーは優先権を放棄したとみなします。もし対戦相手が何か対応したい場合、戦闘開始ステップ中(つまりは攻撃クリーチャーが指定される前)に行動したいと考えるのが普通です。これはそのプレイヤーにとって攻撃クリーチャーが指定される前の最後のチャンスであり、プレイヤーが行動したいと考える最大のタイミングだと考えられます。ただ、私達はそう考えるのが基本だと思いますが、例外は存在します。
主な例外の1つとして、《
ゴブリンの熟練扇動者》のように「戦闘開始ステップの開始時に誘発する能力を持っているオブジェクトが存在する」場合があげられます。対戦相手は《ゴブリンの熟練先導者》の能力がスタックに積まれる前に除去したいと通常は考えるため、そういった行動を取るであろうと見なされるメインフェイズに行動したと考えられます。
それらの行動が解決された後、または行動がなかった場合、アクティブ・プレイヤーは戦闘開始ステップでの優先権を得る。
つまり、アクティブ・プレイヤーが「戦闘に入っていい?」と言った場合でも、機体に搭乗したり、クリーチャー・ランドを起動したりするチャンスが残っているのです。しかし、非アクティブ・プレイヤーにもまだ何かするチャンスはあります。
戦闘開始時の誘発型能力は (対象をとるものであっても)、この時点で宣言されてもよい。
この文章は、誘発すべき能力の誘発を忘れたかどうかの判断が、より寛容になったことを示しています。これは、IPGにおいて「誘発型能力を示さなければならない」とした項目を覆すものです。IPGの該当項目(IPG 2.1)において「対象を取る誘発型能力は、優先権を放棄する前に示されなければならない」とされていますが、手順の省略におけるこの行では優先権を移動する境界線があいまいになっています。この省略の詳細についてはToby Elliotsが示してくれた記事(訳注:日本語解説はこちら)やAIPGの該当する項目を読むとよいでしょう。
・アクティブ・プレイヤーが、スタックが空の状態で第2メインフェイズの優先権を放棄するか、「ゴー」「エンド」「どうぞ」などターンを終了する宣言をしたとき、ターン終了時誘発型能力と関連する場合を除き、非アクティブ・プレイヤーは終了ステップで行動するものと解釈される。対象を取らないターン終了時の誘発型能力は、非アクティブ・プレイヤーが優先権を放棄したあとに解決される。
これは戦闘での手順省略と同じような書き方で定義されていますが、いくつかの違いがあります。ターンを終了するとき、ほとんどのプレイヤーは「どうぞ」や「ターンエンド」といった宣言を手でのジェスチャーとともに行います。この手順省略はプレイヤーがターンを終えようとする段階で行われるものです。もしコミュニケーショントラブルが起きてしまった場合、行われた宣言を両者がどうとらえたかを、それぞれ離して確認しましょう。そして、その優先権の放棄がそのゲーム中においてどのように働くかを確認し、その後あなたの裁定に組み込みましょう。もし非アクティブプレイヤーが呪文を唱えようとしている場合、アクティブプレイヤーの行動が制限されるため、概ねそのターンに行動できる最後の機会であることになります。この例外としては、終了ステップの開始時に何かしらの能力がスタックに積まれる場合が該当します。例えば《
核の占い師、ジン=ギタクシアス》の能力でカードを引かれることを阻害したり、《
最後の望み、リリアナ》の紋章の能力でトークンが増える量を減らしたり、といった戦闘後メインフェイズに行うと仮定されるであろう行動がこれにあたります。
対象を取らないターン終了時の誘発型能力は、非アクティブ・プレイヤーが優先権を放棄したあとに解決される。
これは、戦闘に関する手順省略と明確に異なる部分ですが、プレイヤーはこれら2つのステップを違うものとして扱っていますから、その扱いの違いを反映したものとなっています。ターン終了時に誘発する、対象を必要とする誘発型能力はIPGで示されているガイドラインに従って適用される必要があります。これが示すことは、対象を必要とする誘発型能力は、最終フェイズ/終了ステップに入る際に対象を明示する必要があるということです。大半の場合において、ジャッジはプレイヤーにターン終了の宣言と同時にすぐ誘発型能力を示すことを期待されます。この行が示すことは、もしターン終了時に行われる行動があるのであれば、アクティブプレイヤーは単にトークンを生成するような「対象を指定しない誘発型能力」は、それらの行動が終わったあとに誘発の存在を示すことが認められるということです。
・プレイヤーがオブジェクトをスタックに積んだ場合、特に優先権を保持すると宣言しない限り、優先権を放棄したものとする。
これはプレイヤーがゲームをスピーディーに進めるうえで、どのように手順の省略を行って自然にどのようにプレイするかを具体的に示したよい例です。こうしないと、プレイヤーはオブジェクトをスタックに積んだ後に明確に優先権を放棄したことを示さなければなりません(CR 116.3c参照)。また、この手順省略は、本来許されていない行動に関して、より重要な意味を持ちます。こうしておかないと、プレイヤーがプレイをためらったことによって、対戦相手の反応をつり出し、自分が優先権を持っている状態であり相手の反応を踏まえて行動することを主張できてしまうのです。これによって、レガシープレイヤーが《
冥府の教示者》を唱えたときに《
ライオンの瞳のダイアモンド》をコントロールしているとき、どちらが優先権を持っているのかを明確にした状態で、《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動しなければなりません。そうしないなら、対戦相手が「OK、解決どうぞ」と言った時点で、《冥府の教示者》は暴勇しない状態となるでしょう。
・プレイヤーが優先権を保持することを明示せずに複数のオブジェクトを続けてスタックに積んだ場合、それはそれぞれのオブジェクトが解決された後で次のものをスタックに積むことを意図したものとする。他のプレイヤーがその途中で何か行動を取りたいと思った場合、中断されるところまで巻き戻すこと。
この文は、自身を強化する起動型能力を持つクリーチャーカードを扱う場合などを示すものです(例:《
岸砕きの精霊》)。コントローラーが「《岸砕きの精霊》を6回タフネス上げるよ!」と宣言したとします。それに対して、対戦相手が、《
マルドゥの魔除け》を4点ダメージを与えるモードで唱えたとします。対戦相手は、6回の内で何回目に対応するかを選ぶことができますが、(コントローラーが宣言していない限り)「6回まとめて行った」と主張することはできないのです。何故なら1つ目の文があるため、全ての能力は、先に起動された能力が解決されてから、次の能力がスタックに積まれると仮定されるからです(そういったことは優先権がないと行えません)。それによって、もし対戦相手が6回目の《岸砕きの精霊》の能力に対応して《マルドゥの魔除け》を唱えることを選択したのであれば、既に《岸砕きの精霊》は5回目のタフネス上げる能力までは解決に成功しているという扱いになります。
・プレイヤーが呪文を唱えたり能力を起動したりした時に、解決時に行なうべき選択を宣言した場合、その呪文や能力に対して何か対戦相手が対応しなかった場合には、その宣言通りの選択をしなければならない。対戦相手がその選択について尋ねた場合、優先権を放棄したものとし、その呪文や能力の解決に入ってもよい。
時々プレイヤーは対戦相手の対応がないと仮定したり、対戦相手から情報をつり出そうとして、先に選択を宣言することがあります。この手順省略は、選択を先に宣言することで対戦相手をだまそうとしたり、不適切に情報を得ようとしたり、適正な選択がなされた際と違う選択をすることで、プレイヤーを阻害することになります。しかし、もし対戦相手が呪文や能力で対応したら、そのコントローラーは自身が宣言した選択がどのようなものかは関係なく、好きなように選択することができます。
例)Albertは3体の2/2狼トークンだけをコントロールしており、彼が《名誉の報賞》を唱えて「4点のライフを得て、このトークンに鼓舞するよ」と宣言したとします。Normanは「それに対応して《乱撃斬》唱えるよ」と宣言しました。どのクリーチャーに鼓舞するかは呪文の解決までわかりませんし、Normanは《名誉の報賞》に対応することはできますが、Albertはそれを見て《名誉の報賞》を解決する際に別のトークンに鼓舞によるカウンターを乗せるよう選択を変更することができます。気を付けてほしいのは、この手順において、カウンターの乗せるトークンを変更しないというのは不適正な解決であり、別のトークンに乗せるのは呪文を解決する際に適正な選択がなされているということです。
例)Andyが《虚空》をNaomiを対象として唱えました。NaomiはAndyに選択する数字を確認し、Andyは「1」を選択すると回答しました。この段階ではNaomiが《虚空/Void》に対応するには遅すぎますし、Andyが別の数字を選択することもできません。
・コストが0の場合、特に宣言しない限りそのコストは支払われたものとする。
たいていの場合、プレイヤーがコスト「0」の支払いを要求された時には、プレイヤーが支払わないと明示しない限りは、それを支払ったものとして扱うのが最も適切です。これは経験豊富なプレイヤーがアドバンテージを得ることを妨げることを減らし、ゲームの他の部分に集中できるようにするようにします。
例えば、NaokiとAkiraが対戦している時に、NaokiがAkiraの呪文をX=0の《
意思の激突
》で打ち消せないかと画策してAkiraが宣言をしなかったとしても、0は払われたものとして扱われます。この手順省略はこういったケースが問題になることを予防するために存在します。
・スタックにあるオブジェクトを対象とする呪文や能力を唱えたプレイヤーは、特に宣言しない限り、スタックの一番上にある適正な呪文を対象としているものとする。
これは、カウンター合戦になった際に複数の対象がある打ち消し呪文を想定しています。
・クリーチャーで攻撃する時に攻撃プレイヤーが特に宣言しなかった場合、防御プレイヤーがプレインズウォーカーをコントロールしていた場合にも、プレインズウォーカーではなくプレイヤーを攻撃しているものとする。
これは、プレイヤーがコントロールするすべての攻撃クリーチャーに該当します。これには、攻撃している状態で戦場に出るクリーチャーを含みます。 攻撃するプレイヤーは、攻撃クリーチャー指定ステップのターン起因処理の一部として、防御しているプレイヤーによってコントロールされているプレインズウォーカーを攻撃しているクリーチャーがいれば、それを明示しなければなりません(CR 508.1b)。クリーチャーが攻撃している状態で戦場に出る場合、 攻撃側プレイヤーは、それらのクリーチャーが戦場に出るときに、それらのクリーチャーが防御側プレイヤーによってコントロールされているプレインズウォーカーを攻撃しているかどうかを明示的に述べなければいけません(CR 508.4)。
・オブジェクトが複数のマナ能力を持っている場合、プレイヤーはそのマナが使われる呪文や能力に最も適切に適用される能力を、特に宣言がない限り起動していると見なす。
いわゆる《
魂の洞窟》ルールで、同じようなカードを扱うためのものです。通常、ルールではこういった仮定を行うことはありません。ただ、プレイヤーは「どのマナ能力を起動するか」を注意することはあまりないため、こういった例外を設けました。プレイヤーがどの能力を使って、どういった行動をしたかは「明確」です。この手順省略は、プレイヤーが「ゾンビ」を指定した《魂の洞窟》をコントロールしていて、ゾンビを唱えるために《魂の洞窟》をタップしたものの、マナの色や2つ目のマナ能力を使用したと明示しなかった場合、というコーナーケースを体系化するための試みです。
・占術や諜報を行なうように指示されたときにそうしなかった場合、そのカードを見ずに元あった状態のままにすることを選んだものとする。
この手順省略は、呪文や能力の解決の一部として行われる占術や諜報をカバーします。この変更の理由の大部分は、プレイヤーが得られるはずの情報を無視したとしても、情報を得ることを要求されているわけではなく、得なかったことによってプレイヤーに懲罰を与えるようなことは求めていない、という事です。通常、プレイヤーは占術で情報を得ることを無理に要求されているわけではなく、それを見逃した対戦相手に懲罰を与えたいと考えているわけでもありません。(訳注:パリマリガンのルール記述が残っていましたので削除しています)
・双頭巨人戦で、攻撃クリーチャーはそのコントローラーが特に宣言しない限り、防御チームでそのコントローラーの真正面に座っている側のプレイヤーを攻撃しているものとする。
例えば、アンナとエイプリルのチームがナタリーとニコラスのチームと対戦しており、アンナはナタリーの前に、そしてエイプリルはニコラスの前に座っているとします。もし攻撃クリーチャー指定ステップでアンナとエイプリルの二人とも誰を攻撃するのかを指定していない場合、アンナはナタリーを攻撃し、エイプリルはニコラスを攻撃したものとみなされます。従って、ブロック・クリーチャーがいない状況でアンナが誰を攻撃するのかを指定せずにアンナが《
正気泥棒》で攻撃した場合、《正気泥棒》の誘発型能力が解決する際にアンナはナタリーのライブラリーの上から3枚のカードを見てそのうち1枚を追放することになるでしょう。